表紙 → 物語

のび太

2005/9/14

「のび太くんの本名ってね」
「ん? あぁドラえもんのね」
「うん、そののび太くん」
「本名は、えーと、野比のび太」
「うん、それなんだけど」
「うん」
「のびのび育つように、野比のび太なんだよ」
「映画でもやってたね。」
「うん。やってた。『ぼくの生まれた日』」
「名前がどうかしたの?」
「そうそう、でね、パパの名前はのび助」
「あぁそうなんだ。のび何とかってのは覚えてたけど」
「そうなんだよ。てことはさ」
「うん」
「パパものびのびと育つように野比のび助ってことになるよね?」
「うーん、まぁ、他の意味は想像できないかな」
「つまりね、『のびのび育つように』っていう意味は、のび太くん専用の意味じゃない!」
「なるほど」
「『ぼくの生まれた日』でさ、あんなに感動的に名前の由来を語るのに、オリジナルじゃない!」
「あー。パパもおじいちゃんから同じ由来で名付けられたってことね」
「そう! 何も全く同じ由来で名付けなくてもいいのに!」
「多分さ」
「うん」
「パパの名前は最初決まってなくて、のび太くんのパパだからのび助って決まったんだよ」
「うん、そう思う」
「あれ?」
「でも、それが納得いかないんだよ。パパはのび太くんから生まれたってことになる」
「まんがだしねぇ」
「そうなんだけどさ。他にも、血縁関係はないのにそっくりな夫婦とか」
「あー、あるね。名が体を表し過ぎの人とか」
「うん。出木杉くんがそうだよね」
「勉強もスポーツもできるから、出木杉くん」
「そうそう」
「スネ夫もそうだよね」
「ん? そうだっけ?」
「痩せてるから、骨皮筋衛門に由来して」
「ほねかわすじえもん? って何?」
「あれ? 痩せてる人のことをそう言わない?」
「言うかな。あ、でもそうすると」
「うん」
「骨川っていう、変な名字にも納得できる」
「でしょ?」
「ほねかわすじえもんをさ、何度も言ってるとさ」
「うん」
「なまってスネ夫になるのかも」
「なるほど」
「ほねかわすじえもんほねかわすじえもんすじえもんすじえもんすじえもん」
「すじえもんすじえもんすじえもん」
「……中々スネ夫にならないね」
「……ならないね」
「じゃあスネ夫の方から骨皮筋衛門にならないかな」
「骨川スネ夫」
「骨川スネ夫」
「骨川スネ夫、骨川スネ夫」
「骨川スネ夫、骨川スネ夫」
「スネ夫、スネ夫、スネ夫スネ夫」
「スネ夫スネ夫スネ夫、スネ夫スネ夫、スネ夫!」
「……ならないね」
「……ならないね」
「何で、スネ夫? スジ夫じゃなくて?」
「うーん」
「んー」
「あ」
「ん?」
「すねは? 足の」
「ここ? 弁慶の泣き所?」
「そこ。……弁慶の泣き所って?」
「ん? あー、えーと、弁慶がいるでしょ」
「うん。義経のお供ね」
「うん。で、弁慶は強かったんだけど、すねは弱かったの」
「すね?」
「うん。だから、すねのことを、別名弁慶の泣き所」
「ぶつけると痛いもんね」
「うん。痛かった、この間」
「あー。すごい青くなってたもんね。今も痛い?」
「今は大丈夫」
「泣いた?」
「……ちょっと」
「泣き所だね」
「うん。まさしく」
「えーと、何の話だっけ」
「えーと、弁慶の泣き所の話してて」
「うん、すねのことを話してて。あ、スネ夫だ」
「そうだった。スネ夫だ」
「つまり、スネ夫は、すねが、痩せてる」
「骨皮のすねを持つから、スネ夫?」
「違うかな」
「そうかも。すね痩せてるからかも! やったね新発見!」
「やったね」
「………………やったかな?」
「うん、やったよ」
「そうだね。やった!」
「おめでとう!」
「ありがとう!」
「……」
「……」
「……今日だけでさ」
「うん」
「一生分、スネ夫って言った気がする」
「そんなに何回も言ったかな?」
「30回は言った気がする」
「……一生の間に、スネ夫って30回しか言わないかな?」
「もっと言うかな?」
「どうだろう。でも、今の間に3回くらい言った気がする」
「……うん」
「言い過ぎたね」
「うん。今ね、頭の中の8割がスネ夫な感じ」
「8割は多いね」
「うん。せめて」
「うん」
「2割だよね」
「………………2割も多いよ」

■ひとくちあとがき

そういえばおじいちゃんも「のび何とか」って名前だったような気がする。