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たこやき

2005/8/1

「いか焼き」
「え?」
「いか焼きってさ」
「うん」
「いかを焼いたものだよね」
「そうだね」
「でもさ、たこ焼きって言うとたこを焼いたものじゃないよね」
「うん。あの丸いやつだね」
「それは混乱がないからいいんだけど」
「うん」
「たこをね、普通に焼いたものをなんて呼べばいいのかわからないと思わない?」
「焼きたこ」
「あ!」
「焼きたこ」
「うん……。焼きたこだ……」
「うん。焼きたこ」
「じゃ、じゃあね、焼きい」
「焼きいかも、いかを焼いたものだと思うよ」
「……今日は早いね。返事が」
「だって、昔同じこと考えたことあるもん」
「そうなんだ。誰もが通る道なんだ」
「そうかも」
「多分、お祭りに行くたびに思うんだよね」
「多分ね」
「じゃあこの話はこれでおしまい」
「あ、待って」
「ん?」
「昔考えたけど、今でもわからないことがあってね」
「うん」
「たこ焼きの」
「丸い方?」
「そう」
「うん」
「たこの代わりに、いかを入れた食べ物をなんて呼べばいいと思う?」
「いか焼き、はいかをやいたものだから」
「うん。いか焼きは使えない」
「んー」
「うーん」
「たこ焼きってさ、あ、丸い方ね」
「うん」
「小麦粉と卵を混ぜて生地を作るんだよね」
「うん」
「いかを入れて、それを鉄板の上で焼く」
「そうそう」
「わかった、かもしれない」
「え?」
「いか入り」
「うん。いか入り?」
「いか入りクレープ」
「……」
「……」
「……」
「……」
「誰もたこの代わりにいかを入れない理由がわかった気がする」
「そうだね。まずそうだもんね。いか入りクレープ」
「何度も言わないで」
「ごめん」
「うん」
「あ、クレープ作ろうか」
「クレープよりも」
「うん」
「たこ焼き食べたい」
「じゃあたこ焼きを作ろう」
「いかは入れない方向で」
「うん、いかは入れない方向で」

■ひとくちあとがき

きっと誰もが通る道。