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魔法の解けたひとへ

2006/6/19

人は、魔法にかかったまま生まれてくる。
魔法は徐々に解けるもの。魔法の解けた人、まだ解けないままの人や、解きたいのに解けないで悩む人と、解けたのに解けないふりをしている人がいる。それが世界。
 
魔法の解けた人はわかっているから、静かに沈黙を守ることが多い。考えすぎる。魔法にかかったままの人に気付かれないよう、時に解けた人に対しても、 そっと遠慮して、大丈夫だよと微笑んで、抑えて耐えて、そして自分が悪いと思い込む。 無いところからつくるのではなくて、あるところから引いて考える。 ああもう。ああもう! ひとりのつもり?
それを、それだけは、誰にも邪魔されない正しさで、愛おしく思う。本当に、ほんとうに。
 
お祭りをまぶしく眺めながら、解けた人だけで暮らせたなら。それは言葉の要らない世界。
だけど夢。それは世界ではない。
わがままで残酷なわたしに出来ることは限られていて、でもどんな場合にも祈ることは許される。
許されるはず、と信じられるから、祈る。祈ってる。祈ってます。
 
 
「ねぇおいで、なでてあげるから」
 
そう、言えるなら。言えたなら。
言えないままに、言わないままに、わたしは今日も、言葉で話す。思い、ながら。