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おもいで果実酒

2005/8/29

わたしのこれまでの人生のうちから、少し切り取って話したら、どうして笑えるの? と言われた。 泣いたけど、泣いてきたけど、でもそんな、あなたに代わりに泣いてもらうほどには辛くはなかったよ。 そう伝えてもまだ、これまでのわたしの為に泣いてくれる彼女の気持ちに、わたしは涙をこぼした。 泣くのではなくて、すーっと涙が頬を。

こうやって話したことも、これまでの全部がいつかは思い出になることを知っているから、と言うと、 彼女は涙を流しながら、笑った。そうね、いつかは懐かしんで思い出せるといいね、と。

別れた、色々な意味で別れた人との事も、わたしは今、微笑んで思い出せるから、 思い出せてきたから、だから、消えてなくなりたい出来事があった日も、わたしは泣きながら写真を撮って、日記を付ける。 悲しいアルバムは、時間に漬けておくと、やさしい味になる、そういう果実酒だと、 そう言った人を正確には思い出せないけれど、泣いてしまう日にはこれを、少し飲む。 これまでをおいしく飲み干せて来たから、だから、今日のこの涙もきっと平気だ、と。

これからも、わたしは笑えます、笑えるよ。