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幻想

2005/7/9

「あなたは、あなたが思っているほど優れてなんていない」
 どうすればあなたの様になれるの、と聞いた時の答え。
 もしかしたら聞かない方がいいのかもしれないと、警告付きの彼女の言葉。
 でもわたしはうなずく、うながす、聞かせて欲しいと言ってしまった。
 
「あなたは自分が他人より優れていると思っている。頭がいいと思っている。価値があると思っている。特別だと思っている。 他人より優れていたいと思っている。他人より難しいことを考えていると思っている。いつか機会があれば自分の力を示せると思っている。時には他人を否定することで保たれているあなたの矜持」
 
「だけど残念なことに、あなたはあなたが思っているほど優れてなんていない。あなたが考える『複雑なこと』なんて、大抵の人が考えている。いつかなんて来ない。 他人が自分より優れていると感じたとしても、『でも』で始まる言葉であなたはそれを否定する。それは、それこそが、あなたが無根拠の証」
 
「あなたの自信も根拠もプライドも、すべて、幻想」
 
「あなたがあなたを知らないままに自分を示しても、その道ならわたしも通ったよ、まだそんな場所にいるの、と思われる」
 
 
「わたしの言葉を受け入れられない限り、あなたは止まったまま。何の反論もなく認められない限りあなたは始まらない。わたしの言葉を受け入れて、なお残ったものがあなたの価値」
 
 
 
「あなたに機会なんてない。まだ始まってもいないのだから」

もう一度彼女に会わなくてはいけない。せめてわたしは始められたのだと、伝えなくてはいけない。
 
 
 
 
感謝を、彼女に。