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言霊

2004/9/17

眠れない夜だとか、誰にも知り合いに会わなかった日の夕方だとか、 そうした時、何かに追いかけられるような不安を感じることがあって、 わたしは最悪を考えてしまう。
最悪。良くないこと。
「死」や「別」といった漢字がまざる、許されない、許さない最悪。
『いなくなる、さよなら、最後の言葉、だってまだこれからだと思っていたのに、 そんな風に慰めないで、まるでこれが現実みたいじゃない』

考えただけで不安に体温を奪われる。寒い。
わたしが考えたせいで、それが本当になったら?
そんなことはない、とわかってる。でも不安は消えない。涙が出てくる。
ドアを開けて、真っ暗だったらどうしよう。

破り捨てるイメージ。灰にするイメージ。
まるで「わたしがそう考えた時間」が存在しなかったかのように。
聞かれてはいけない。悟られてはいけない。
ありったけの思いで否定して、わたしはやっと息を吐いた。