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憧憬

2003/5/1

「普通だよ」と彼女(或いは彼)らは笑う。
 迷い無く、あらかじめそれが決められていたかのようにその人たちは行う。
 彼らの言を聞く限りそれは意識もせず呼吸のように行われたもののようだが、出された結果を見れば、疑ってしまう。 洗練されており、私がどう工夫を凝らしたところで到底そのレベルまでは到達できないほどの質を誇っている。 それが才能やセンスの問題であると言うことを認めたくなくて、私は彼女らの言う「普通」を信じようとは思っているのだが(要は自らに才能があるということを信じたいがために)、私のつくったものは、程遠く偽物の匂いしかしない。 自然であることがそれまでの道だと言うのなら、既に彼女たちを真似しようとした私は到達できないのだろう。答えを知ってしまうと、途端に面白みを失ってしまう例のあのパズルのように。
 参加できない私はだから、逆に偽物らしさを目指し、その一方で諦め切れない努力を続けている。逃避的動機でも手段でも、到達できれば良いと開き直ることができたのは、私の唯一の強みなのだろうと、そう思う。