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ろくむし / 1980年代・広島市

2006/6/25

1980年代・広島市。広島市の、とある団地のローカルルール。
遊びのルールなんて地域によって異なるものだし、それどころか時代によっても変わっていくものなのだろう。
だからこれは、あの頃、あの時、あの場所だけの。

だらだら書いてみます。こんなルールで遊んでいました。

■ろくむし

ろくむしは、屋外で行う課題達成型のゲーム。
用意するものはやわらかいゴムボールひとつ、それからグラウンド。
ゴムボールは人に当てるために使うので、やわらかいものでないと駄目。できれば蛍光色。
文具屋さんでなわとびの隣に置いてあるような、スマイルマークが書いてあるようなゴムボールが最適。
グラウンドは、30メートル四方の広さは欲しいところ。
遊具は無いほうがいいけれど、あっても変則的でおもしろいかもしれない。障害物。
参加人数は、最低でも5、6人はいたほうがおもしろい。最適は多分、10人強。鬼は基本的にふたり。残りは子。
ボールは鬼が使う道具。

グラウンドの端に、半径5、6メートルの円をひとつ書きます。反対側の端にも円をひとつ。これが安全地帯。
円は、長方形のグラウンドの、対角辺りに書くのがおもしろい。 直線を目指せるし、あるいは放物線を描いて回り込むことも出来るから。 子はこの安全地帯を往復して、ろくむしを目指す、これが課題。
一往復で、いちむし。ニ往復でにむし、三往復半でさんむしはん。
ろくむしが近くなると、大声で叫んでアピールします。
「今なんむし?」「よんむしまでいった」と、会話しつつしつつ。

鬼は、子の往復を妨害します。
鬼の投げるボールに当てられたらその子はアウト。
鬼に触れられてもアウトにはならず、ボールだけが、アウト要因。
つまり、子は親の投げるボールをかいくぐって「ろくむし」を目指すことになります。
円の中は安全地帯なので、ボールを当てられてもアウトにはなりません。
アウトになった人はその場にしゃがみ、ゲームの行方を見守ります。
(アウトになった人がすぐにしゃがむ、というのは時々によって異なっていて、 参加者次第ではすぐにしゃがまないで、その場で立ったまま、というルールの場合も)

ゲームの開始時、子はスタート地点となる円の中。
鬼が円に向かってボールを放り、子がそれを手で打ってゲーム開始。
ボールはなるべく鬼のいない方向、鬼の拾いにくい方向へ飛ばすべきです。
鬼がボールを拾いに行く間に、子は一斉にスタートを切って対岸の円を目指します。

鬼が安全地帯の円の傍にいて、円から出ると当てられてしまう、という状況の時、 子は気軽に外に出られません。膠着してしまう。
こういうとき、鬼はカウントアップをすることで子を円から追い出すことができます。
鬼が10数える間に、子は円から出なくてはいけない。
カウントアップは、鬼のひとりが円に片足を踏み入れて、ボールを真上に放りながら行います。
一度ぽーんと放って、それを自分で受け取ってカウントいち。これを10まで。
ボールは頭より高く上げなくてはいけないという決まりがあって、なぜなら、 子はカウントアップするボールを手で打っていいのです。 打って、鬼がボールを拾いに行く隙に円を脱出、対岸の円を目指す、という寸法。

ゲームは、誰かがろくむしを達成するか、全員がアウトになることで一区切り。
全員がアウトになった時は、そのゲーム中最初にアウトになった人からふたりが次の鬼に。
誰かがろくむしを達成した時は、達成した子が高らかに「ろくむし!」と叫びます。叫ぶ。
叫ばれた瞬間、鬼を含んだ全プレーヤーは急いで座らなくてはいけません。
なぜなら座るのが遅かった人ふたりが、次の鬼になるからです。
「ゆっくんが遅かったね」「うん、ゆっくんとあいちゃんが次の鬼ね」
合議制。氷鬼や缶けりと違って、ろくむしの鬼はあんまり忌避されない。いつまでも延々鬼をし続ける、ということがなくて、 誰かがろくむしを達成してしまえば鬼から解放されるチャンスが訪れるから。

このゲームがおもしろかったなぁ、と思うのは、各人がそれぞれ自分のペースで走れるところ。
たいてい円から円へは全力疾走なので、次の円では息が切れている。
息を整えて、鬼の隙をうかがい、逃げる走る、走って逃げる。
学年が違うと体力も違うから、「今なんむし?」の答えには段々差が出てくる。 でも足が遅いからといって絶対的に不利だというわけではなくて、 要するに鬼のボールに当てられなければいいのだから、小回りも重要。
鬼がボール投げた! と思った瞬間しゃがんだり、急旋回したりすると、ボールなので案外避けられる。
避けると鬼はそれを拾いに行かなくてはいけないし、その隙に他の人も走る走る走る。

鬼がカウントアップしている時、足に自信のある者は敢えて、ボールをはたかないまま走り出したりする。
それを鬼が追ってボールを投げれば他の人も逃げ出すチャンス。
はたまた一人が円から逃げ出す素振りを見せ、すぐに円に戻って鬼の注意を逸らす、その隙に反対側から脱出。 あるいは円の中の子に注目している鬼を尻目に、反対側の円からの帰還者が円に飛び込みもする。
要はいかに隙を作るか、作った隙を突けるか。鬼はふたりいても、ボールはひとつしかないのだから。
足の速さ以外にも、かけひきプレイ協力プレイ。

鬼はふたりいます。
ふたりいるので、ひとりがボールを投げる時は、もうひとりが反対側に回って外れたボールをすぐに回収できるようにしたり、 カウントアップ時、ボールの打たれる方向を予測して動いたり、鬼同士でボールをパスして安全だと思って油断していた子を奇襲したり、 作戦とコンビネーション。
足の速い人から狙うか、どちらかの円に集中して狙いを定めるか。

こうしてゲームは幾度となく。

ゲームの終わりは、他のゲームがそうであるように、夕焼けか、晩ご飯か、大抵は時間だった。
薄暗くなる頃には体力も尽きかけているのに、むしろその辺りが一番おもしろい、というのは言わずもがな。
ボールが蛍光色なのは、夕闇に負けないためなんだよ。

最後に遊んだのはいつだったかなー。
明日もあると思っていたのにね。

だらだらと、おしまい